住宅性能評価書は、新築・中古にかかわらず「質の高い住宅」であることを証明できる書類の1つです。住宅区分によって、性能を判断する各項目が定められています。
住宅性能評価書を取得すれば、住宅ローンなどの優遇を受けられる・資産価値が向上するなどのメリットを得られます。評価項目や認証取得のメリットを理解し、質・価値の高い建築物の建設を目指しましょう。
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住宅性能評価書とは
住宅性能評価書とは、住宅性能表示制度に基づいて交付される書類の1つです。専門家が「評価基準を満たしているか否か」をチェックし、住宅性能を等級・数値で評価します。
住宅性能表示制度とは 質の良い住宅を安心して取得できるよう、「住宅品質確保法(2000年制定)」に基づいて定められた制度
住宅性能評価書は新築の場合、耐震性・耐久性・省エネ性をはじめ10項目の性能評価を満たした住宅にのみ交付されます。住宅性能評価書を取得した住宅は、住む上で安心・高い資産価値が期待できるという点が魅力です。
一方、似た言葉として「住宅性能証明書」という書類があります。こちらも「質の良い住宅」と証明できる書類の1つですが、評価項目は耐震性・耐久性・省エネ性の3つのため、住宅性能評価書よりも取得のハードルが低いという特徴があります。
住宅性能評価書の評価基準〜新築・中古・マンションの場合〜
住宅性能評価書の評価基準は、住宅区分によって若干異なります。新築・中古・マンションのケースをそれぞれ紹介するので、参考にしてみてください。
新築の場合
新築住宅の場合、住宅性能評価書は「設計住宅性能評価書」と「建設住宅性能評価書」の2種類が存在します。
設計住宅性能評価書:設計段階で行う住宅性能評価を記した書類
建設住宅性能評価書:建設段階で設計性能評価通りに施工されているかを評価し、その旨を記した書類
建設住宅性能評価を受けるためには、前段階である設計住宅性能評価の認定が必要です。両方を取得することで、公的な評価を得られるようになります。
【評価10項目】
中古の場合
中古住宅の場合は、評価機関からの「現況検査」を受けることで「既存住宅の住宅性能評価書」を交付してもらえます。新築と比べて評価項目が少なく、評価員による目視で行われます。
中古住宅の性能評価検査項目における、必須項目は現況調査のみです。そのほか任意の項目は、新築時の10項目から「音環境」を除いた9項目となります。

マンションの場合
マンション(共同住宅)の場合、評価基準・項目については「マンションか否か」ではなく「新築か中古か」で分類されます。そのため、各評価項目は前述したとおりです(新築:評価10項目 / 中古:現況検査+α)。
ただし、マンションが住宅性能評価を受ける場合は管理組合を通なさないと申請できません。マンションは住宅の専用部分と共用部分、それぞれをセットで評価する必要があるためです。
管理組合へ「過去に性能評価を受けたことがあるか」「当時の評価結果があるか」などを確認し、検査・評価が現実的かどうかを判断しましょう。
また、マンションの検査結果には「有効期限」があるため注意してください。
適切な維持管理に関する計画等が認められ、評価申請日が竣工時より10年以内の場合:過去5年以内の評価結果
適切な維持管理に関する計画等が認められ、評価申請日が竣工時より10年以上経過している場合:過去3年以内の評価結果
適切な維持管理に関する計画等が認められない場合:過去2年以内の評価結果
住宅性能評価書を取得するメリット
住宅性能評価書を取得すると、住宅ローンや地震保険などで優遇を受けられたり、トラブル時に専門機関を利用できたりなどのメリットがあります。また「質の高い住宅」と証明できるため、資産価値が高くなって売却時に得をするケースもあります。
住宅ローン・贈与税・地震保険などで優遇を受けられる
住宅性能評価書を取得すると、住宅ローンや贈与税、地震保険などで優遇を受けられます。
住宅ローン:当初一定期間の金利が引き下げられる「フラット35」の金利優遇プランを利用できる。
贈与税:住宅取得時に直系尊属(親や祖父母)から資金援助を受けた際、贈与税の非課税上限が最大500万円も拡大される(中古の場合は別途規定あり)。
地震保険:耐震等級3だと50%、耐震等級2では30%、耐震等級1の場合は10%割引される。
すまい給付金:新築住宅を消費税率10%で取得した場合、すまい給付金の申請書類の1つとして使用できる。中古の場合でも、売主が事業者(不動産会社など)で消費税率10%かつ築10年以内の住宅であれば対象となる。

資産価値が高くなる
住宅性能評価書は、国土交通省から「一定の基準を満たした質の良い住宅」であると認められた証明になります。つまり、住宅の資産価値の向上につながるのです。
優れた住宅性能という点だけでなく、住宅の劣化のしにくさの証明にもなります。そのため、住宅を売却する際に想定よりも高い価格で売却できる可能性があるのです。
トラブル時に紛争処理機関を利用できる
住宅性能評価の認定を受けていると、トラブル時に紛争処理機関(※)を利用できます。万が一、売買や建築会社との間にトラブルが生じた場合でも、紛争処理機関へ紛争処理を申請できるのです。
※国土交通大臣が指定する各地域の弁護士会のこと
紛争対象は「請負契約や売買契約に関する当事者間の紛争すべて」で、紛争処理の手数料は1件あたり1万円。設計住宅性能評価書と建設住宅性能評価書の両者を取得した住宅であれば、新築・中古は問いません。
住宅性能評価書のデメリットはある?
住宅性能評価書には、「費用がかかる」という1点のみデメリットがあります。一般的に、住宅性能評価を受けるためには10万〜20万円の費用がかかるのです。
「質の高い」住宅を建設する時点でお金がかかるため、追加費用をデメリットに感じることがあるでしょう
ただし、評価における必須項目(※)だけであれば大幅なコストアップにはなりません。住宅性能評価のバランスから任意の項目を追加する場合は、設計会社や建築会社に相談してみるのがおすすめです。

住宅性能評価書の取得方法〜評価書はいつもらえる?あとからでもOK?〜
住宅性能評価書の取得方法は、以下のとおりです(戸建ての場合)。
建築主が、設計住宅性能評価の申請書・設計図書等を評価機関へ提出します。
検査日程を調整し、当日は建築主の立ち会いのもと評価員が検査を行います。
補修等の意思がない、または評価項目を満たしている場合は、工事の着工前までに「設計住宅性能評価書」が交付されます。
着工後は、各工事完了時(基礎配筋・躯体工事・下地張りの直前)と竣工時の計4回で検査を実施し、図面どおりの施工が成されているかを評価します。
評価項目に問題がなければ、検査終了後2週間ほどを目安に「建設住宅性能評価書」が交付されます。
住宅性能評価は、住宅の規模・建て方・状態・築年数などを問わず、すべての住宅が申請できます。既存住宅は「既存住宅の住宅性能評価」を受けられるので、竣工後や築数年での後付け申請も可能です。
建設住宅性能評価書のよくある質問〜交付されないケース・紛失・必要ない?〜
建設住宅性能評価書に関する、よくある質問に回答します。
交付されないケースがある?
住宅性能評価を申請しても、評価基準・項目を満たさない住宅には評価書が交付されません。基準に満たない場合は、通知があるため確認しましょう。
紛失してしまったらどうすればよい?
建設住宅性能評価書を紛失した場合は、再発行が可能です。再発行の申請書に必要事項を記入後、評価機関へ提出してください(要手数料)。
住宅性能評価書は必要ないって本当?
住宅性能評価書は、デメリットよりもメリットのほうが豊富です。「質の良い住宅」であることが客観的にわかるので、取得しておくことをおすすめします。将来的に住宅の売買を検討したとき、資産価値の向上なども期待できます。
住宅性能評価書にかかる費用
住宅性能評価書にかかる費用の一例を紹介します(株式会社 住宅性能評価センターの場合)。