BELSとZEHの違いとは?2つの省エネ評価制度をわかりやすく比較解説
- soccer31415mt926
- 10月22日
- 読了時間: 8分

省エネ性能を示す制度として広く知られる「BELS(ベルス)」と「ZEH(ゼッチ)」。どちらも住宅のエネルギー効率を評価する制度ですが、対象や目的、評価の仕組みに明確な違いがあります。
本記事では、BELSとZEHの違いをわかりやすく比較し、それぞれの特徴や併用のメリットについて解説します。
BELSとは?ZEHとは?制度の基本をおさらい

2つの制度の根本的な違いを理解するために、まず各制度の概要と役割を確認しましょう。
BELSの概要と役割
BELS(Building-Housing Energy-efficiency Labeling System)は、建築物省エネルギー性能表示制度の略称で、建築物の省エネ性能を第三者機関が評価・認定する制度です。
一般社団法人 住宅性能評価・表示協会によって運用されており、2016年4月より住宅にも対象範囲が拡充されました。
BELSの主な目的は、建築物のエネルギー消費性能を「見える化」することで、性能の優れた建築物が市場で適切に評価・選択されるような環境整備を図ることです。
評価結果は星の数(1つ星〜5つ星)で表示され、専門知識がない方でも建物の省エネ性能を一目で理解できる仕組みになっています。
BELSは住宅・非住宅を問わず、新築・既存を問わず、あらゆる建築物が対象となり、建物全体だけでなくフロア単位やテナント単位での評価も可能です。
ZEHの概要と目的
ZEH(Net Zero Energy House)は、ネット・ゼロ・エネルギー・ハウスの略称で、年間の一次エネルギー消費量(冷暖房・照明・給湯・換気など)の収支がゼロになることを目指した住宅のことを指します。
わかりやすく言うと、「家で消費される電力よりも、創り出される電力の方が多い(もしくは同じ)住宅」です。
ZEHは特定の省エネ基準に達した住宅、あるいはその基準そのものを指す言葉であり、高断熱性能の実現や高効率設備の導入に加え、太陽光発電などの再生可能エネルギーシステムの搭載(創エネ)が必要です。創エネが必須である点が、ZEHの大きな特徴となります。
近年、環境省・国土交通省・経済産業省の3省が連携し、国をあげてZEHの推進に向けて取り組んでおり、補助金制度も充実しています。
BELSとZEHの主な違い

両制度の根本的な違いを3つの観点から詳しく比較してみましょう。
評価の観点
最も重要な違いは、BELSが「制度」であり、ZEHが「住宅の種類・基準」であることです。BELSは建築物の省エネ性能を評価・表示する制度(ラベリングシステム)であるのに対し、ZEHは定められた省エネ性能基準を満たす住宅そのものを指します。
このため、「BELS住宅」という表現はあまり使われませんが、「BELS認証を取得した住宅」と言うことはできます。一方、「ZEH住宅」という呼び方が一般的で、ZEHは住宅の性能基準と考えると両者の違いがわかりやすくなります。
BELSは省エネ性能を評価する「制度」、ZEHは特定の省エネ基準に達した「住宅」という関係性で理解すると良いでしょう。
評価基準・認証の仕組み
BELSは建物の省エネ性能をBEI(Building Energy Index:省エネルギー性能指標)と外皮性能(UA値)により評価し、★(1~5)で表示します。BELS自体は再エネ設備の有無を評価対象に含めません。
一方、ZEHはより厳しい基準が設定されており、以下の要件をすべて満たす必要があります。
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例えば、東京23区(地域区分6)では、省エネ基準におけるUA値は0.87ですが、ZEHでは0.6以下が求められるなど、ZEHの方がより厳格な基準となっています。
対象となる建物・活用シーンの違い
BELSは住宅・非住宅を問わず、すべての建築物が対象となります。オフィスビル、商業施設、工場、学校など、用途を問わず評価を受けることができ、新築・既存の別も問いません。
ZEHは住宅に特化した基準であり、非住宅建築物は対象外です(非住宅向けにはZEB:ゼロエネルギービルがあります)。また、ZEHは新築住宅を中心とした制度で、既存住宅での認定は限定的です。
活用シーンとしては、BELSは幅広い建物の省エネ性能アピールに活用でき、ZEHは住宅における最高水準の省エネ性能を示すブランドとして機能しています。
BELSとZEHの取得費用・期間比較

実際の取得にかかるコストと期間を比較して、どちらを選ぶかの判断材料としましょう。
それぞれの取得にかかる費用
BELS取得費用は、5万円〜15万円程度が一般的です。省エネ性能に特化した評価のため、必要書類も比較的少なく、手続きが簡便なことから費用を抑えられます。
住宅の規模や評価項目数によって変動しますが、他の認証制度と比較して取得しやすい価格帯となっています。
ZEH住宅の場合、認証取得費用よりも建築コスト自体が高額になります。高断熱材、高効率設備、太陽光発電システムなど、ZEH基準を満たすための設備投資により、一般的な住宅より200万円〜400万円程度の追加費用が必要になる場合が多いです。
ただし、ZEHには補助金制度があり、条件によって55万円から140万円程度の補助金を受けることができるため、実質的な負担は軽減されます。
申請から認定までの期間
BELS認定は申請から2週間〜4週間が目安となります。設計図書や計算書類の審査が中心となるため、比較的短期間で評価書を取得できます。また、着工前・着工後・竣工後いずれのタイミングでも申請可能で、日程への影響が少ないのも特徴です。
ZEH住宅の場合、補助金申請を含めると手続きが複雑になります。ZEHビルダーまたはZEHプランナーとの契約から始まり、補助金の交付申請、中間報告、完了報告まで、建築工程と並行して複数回の手続きが必要です。全体のプロセスには6ヶ月〜1年程度を要することが一般的です。
BELSとZEHの併用が進む理由

ここではBELSとZEHの併用が進む理由について、いくつか紹介します。
補助金申請の要件としての活用
ZEH支援事業の補助金制度では、申請する住宅は建築物省エネ法第7条に基づく省エネ性能表示(BELS等、第三者認証を受けているものに限る)を中間報告前に取得し、その写しを提出することが交付要件となっています。
つまり、ZEH補助金を申請するためには、BELS等の第三者認証が必須となっており、ZEH住宅であってもBELS認証なしでは補助金を受けられません。このため、ZEH住宅を建築する場合は、自動的にBELS認証も取得することになります。
また、2024年1月から適用される住宅ローン控除でも、省エネ基準を満たさない住宅は控除対象外となったため、BELS認証による性能証明の重要性がさらに高まっています。
BELS評価がZEH達成の証明手段になる
2017年4月1日から、ZEH(もしくはNearly ZEH)の基準を満たしている場合、BELSのプレートやシールなどにZEHマークを表示することが可能になりました。これにより、BELSがZEH達成の公式な証明手段として機能しています。
ZEH基準の住宅がBELS評価を受けることで、その評価書とラベルにZEHマークを表示でき、省エネ性能に優れていることを対外的にアピールできます。自己評価の場合、ZEH基準を満たしていると証明するためには設計図や仕様書、計算結果など様々な書類が必要ですが、BELS評価書にZEHマークが表示されていれば、その一枚でZEH基準を満たしていることを証明できます。
どちらを選ぶべき?判断のポイント
最適な選択をするために、目的や状況に応じた判断基準を整理しましょう。
設計・予算・目的で選ぶ
予算を重視する場合、BELS認証の方が取得しやすい選択肢となります。5万円〜15万円程度の費用で第三者認証による省エネ性能の証明が得られ、住宅の資産価値向上や差別化が図れます。
一方、最高水準の省エネ性能を求め、補助金制度を最大限活用したい場合は、ZEH住宅が適しています。初期投資は高額になりますが、補助金により負担軽減が図れ、光熱費削減効果も長期的に期待できます。
建築目的別では、自社の技術力をアピールしたい事業者はZEH住宅、コストパフォーマンスを重視しつつ性能をアピールしたい場合はBELS認証が効果的です。また、非住宅建築物の場合はZEHが対象外のため、BELSが唯一の選択肢となります。
将来の資産価値・売却も視野に入れて
将来の売却を視野に入れる場合、市場での差別化効果を考慮する必要があります。ZEH住宅は最高水準の省エネ性能を示すブランドとして認知度が高く、購入者への訴求力が強いという特徴があります。
一方、BELS認証は星の数による分かりやすい表示で、専門知識のない購入者にも性能が伝わりやすいメリットがあります。また、BELSは既存住宅でも取得できるため、将来的なリフォーム時の性能アピールにも活用できます。
長期的な資産価値を考えると、省エネ性能への関心の高まりにより、どちらの認証も有効ですが、ZEH住宅の方がより高い評価を受ける可能性があります。ただし、地域や購入者層によって評価は異なるため、ターゲット市場の特性を考慮した選択が重要です。
まとめ
BELSとZEHは似て非なる評価制度であり、それぞれ異なる強みを持っています。住宅の設計や目的、補助金活用の有無によって、どちらを選ぶか、あるいは併用するかが決まります。
最適な選択をするためには、制度の違いを理解したうえで、専門家と相談しながら進めることが重要です。
BELSは「制度」として幅広い建物に適用でき、比較的取得しやすい認証です。ZEHは「住宅の基準」として最高水準の省エネ性能を示し、補助金制度も充実しています。
どちらも2050年カーボンニュートラルの実現に向けた重要な取り組みであり、目的に応じた適切な活用により、建物の価値向上と環境負荷軽減の両立が可能になります。




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