CASBEEとBELSの違いとは?2つの建物評価制度をわかりやすく比較解説
- soccer31415mt926
- 10月21日
- 読了時間: 7分
更新日:7 日前
建築物の環境性能を客観的に評価・可視化する手段として注目されている「CASBEE」と「BELS」。どちらも建物の省エネ性能や環境負荷に関する評価制度ですが、その目的や評価基準には違いがあります。
本記事では、CASBEEとBELSの違いや特徴、選び方のポイントをわかりやすく解説します。
CASBEEとBELSの基本概要

建物評価制度であるCASBEEとBELSの特徴や目的を整理し、それぞれの概要を見てみましょう。
CASBEEとは
CASBEE(キャスビー/建築物総合環境性能評価システム)は「Comprehensive Assessment System for Built Environment Efficiency」の略称で、日本で開発された建物の環境性能評価制度です。
省エネ性や環境負荷を可視化し、持続可能な社会の実現を目指しています。住宅や商業施設、公共施設など幅広い建物に適用され、設計から運用段階まで評価が可能です。
環境性能に関する指標をもとにスコア化され、数値が高いほど環境に配慮した建物と判断されます。この仕組みにより、建物の環境性能を改善するための指針を提供し、持続可能な建築の普及を後押しします。
また、CASBEEは自治体の環境政策や建築基準と連携して活用されることもあり、行政施策に直結する制度として位置づけられています。国内では設計者や事業者に広く採用され、環境配慮型の建築を推進するための実務的な指標として利用されています。
BELSとは
BELS(ベルス/建物エネルギー性能表示制度)は「Building-Housing Energy-efficiency Labeling System」の略称で、建物の省エネ性能を評価する制度です。
住宅や非住宅を対象に、エネルギー消費量を基準として評価を行います。国土交通省が推進しており、省エネ性能を数値化して星の数で表示するのが特徴です。
設計段階から運用段階まで幅広く活用でき、エネルギー効率の改善を促進します。BELS評価を取得することで、建物の省エネ性能を客観的に示せるため、購入者や利用者に信頼性の高い情報を提示できます。
さらに、BELSは住宅ローン控除や補助金制度と連動するケースもあり、経済的メリットを得ながら性能を証明できる仕組みとして注目されています。評価のわかりやすさから、一般消費者への訴求力が強い制度として普及が進んでいます。
CASBEEとBELSの主な違い

CASBEEとBELSはどちらも建物性能を示す制度ですが、対象や評価方法に違いがあります。ここでは主な相違点を見てみましょう。
評価対象の違い
CASBEEは、建物全体の環境性能を幅広く捉える制度です。省エネ性に加えて、資源循環や室内環境、周辺環境への影響といった多角的な視点を取り入れて評価します。
さらに、CASBEEは国際的な評価基準との整合性も考慮しており、海外の制度と比較検討する際にも活用できます。
一方、BELSは、省エネ性能に特化しており、一次エネルギー消費量や省エネ対策の実施状況を中心に評価します。また、BELSは住宅ローン控除などの制度とも関連しているため、住宅購入者にとっても実用性の高い仕組みです。
つまり、CASBEEは環境性能を総合的に把握する制度、BELSは省エネ効率を直感的に示す制度といえるでしょう。どちらを重視するかは、建築の目的や利用者への訴求ポイントによって変わってきます。
評価方法とスコアの違い
CASBEEは「BEE値(Building Environmental Efficiency)」という数値を算出し、その値をもとに「S(優秀)」「A(良好)」「B+(やや良好)」「B(普通)」「C(改善が必要)」の5段階にランク分けします。BEE値は建物の環境性能を効率と負荷のバランスで数値化するもので、設計段階から建物完成後まで幅広く利用できるのが特徴です。
一方、BELSは一次エネルギー消費量を基準に、省エネ性能に特化した星評価を採用しています。評価は★1〜5の星の数で示され、星が多いほどエネルギー効率が高い建物であることを意味します。数値化の仕組みが異なるため、目的に応じて適切な制度を選ぶことが重要です。
表示形式・認証機関の違い
表示方法や認証体制にも差があります。CASBEEは前述の5段階評価を採用し、制度の運営は一般財団法人 建築環境・省エネルギー機構(IBEC)が担っています。
IBEC内の「CASBEE協議会」が中心となって評価方法の整備や普及を進め、専門の評価員が審査を行います。
一方のBELSは、国土交通省の基準に基づいて登録された評価機関が認証を実施します。表示がシンプルで直感的に理解できる点が特徴で、利用者や購入者に性能を伝える際に有効です。評価を受ける際には、この認証体制の違いも踏まえて検討することが重要です。
ここでの違いは、結果の使われ方にも表れます。CASBEEは自治体の制度や環境政策と連動して活用されることが多く、行政手続きの一部に組み込まれるケースがあります。
一方、BELSは星評価のわかりやすさから、販売広告やパンフレットにそのまま掲載されることが多く、市場での訴求力が高い点が特徴です。
それぞれの制度を活用するシーン

ここではCASBEEとBELSが活用できる場面を解説します。
自治体や補助金制度との関係
CASBEEやBELSは自治体の政策や補助金制度と密接に関わっています。多くの自治体では、環境性能を高めた建物の普及を目的に、評価制度を活用した支援策を設けています。
例えば、CASBEEで高評価を得た建物が税制優遇や補助金対象となるケースがあります。
BELSについても、ZEHや省エネ住宅の推進にあわせて、補助金や助成の条件に組み込む自治体が増えてきました。
ただし、支援内容は地域によって異なるため、建築を計画する際は自治体の制度を確認することが欠かせません。評価制度を活用すれば、環境配慮を示しつつ経済的な負担を軽減できる可能性があります。
住宅・非住宅建築における使い分け
どちらの制度も住宅・非住宅どちらにも利用できますが、重視するポイントが異なります。CASBEEは環境性能を総合的に評価するため、住宅では快適性や健康への配慮、非住宅では地域環境や資源利用まで幅広くカバーできます。
一方、BELSは省エネ性能に特化しており、オフィスや商業施設など非住宅建築での光熱費削減や省エネアピールに有効です。
住宅では住み心地や健康を重視する場合にCASBEEが役立ち、非住宅では運営コスト削減を狙う場合にBELSが効果的といえるでしょう。建物の用途や目的に合わせて制度を選ぶことが、持続可能な建築の実現につながります。
建物所有者・事業者にとってのメリット
CASBEEやBELSを取得することで、建物の性能を客観的に示せるため、入居者や顧客からの信頼を得やすくなります。環境意識が高まる中、省エネや環境配慮を打ち出すことは競争力の強化につながります。
また、認証を受けた建物は補助金や優遇制度を活用できる可能性があり、初期投資を抑えられる場合があります。さらに、省エネ性能が高ければ光熱費を抑えられ、長期的な視点で、運用コスト削減につながるでしょう。
このように、両制度は環境面だけでなく、経済面でも所有者や事業者にメリットをもたらす仕組みです。
CASBEEとBELSのどちらを選ぶべきか

建物評価制度を選択する際のポイントを見てみましょう。
取得コストと申請手間
CASBEEは専門評価員による審査が必要で、そのための費用が発生します。評価基準も幅広いため、設計図書や計算資料を整える準備に時間がかかるケースが多く、申請負担は比較的大きい制度です。
一方、BELSは一次エネルギー消費量を中心に評価する仕組みで、プロセスがシンプルな分、手続きや費用を抑えやすい傾向があります。
ただし、費用は建物の規模や用途によって変動するため、常にCASBEEが高くBELSが安いとは限りません。どちらも長期的には資産価値の向上や省エネ効果によるコスト削減につながるため、目的や条件を考慮したうえで選ぶことが重要です。
施主・設計者・不動産事業者の視点
施主・設計者・不動産事業者の視点から見ると、次のように使い分けが考えられます。
視点 | CASBEEが適するケース | BELSが適するケース |
施主(住宅所有者) | 住み心地や快適性を含めた総合性能を重視したい | 補助金や税制優遇を意識し、省エネ性能を数値で示したい |
設計者 | 環境性能を幅広く設計に反映したい | 省エネ効率を明確に示し、クライアントにわかりやすく提案したい |
不動産事業者 | 物件の総合的な環境価値をアピールしたい | 星評価でシンプルに性能を示し、購入者や入居者に直感的に伝えたい |
のように立場や目的によって最適な制度は変わります。どちらを選ぶかは「建物の用途」「求める評価の内容」「利用できる支援制度」を踏まえて判断するとよいでしょう。
まとめ
CASBEEとBELSは、建物の環境性能を評価するための重要な制度ですが、それぞれ目的や特徴は異なります。CASBEEは環境負荷を総合的に評価し、持続可能な社会の実現を目指す制度です。一方、BELSは省エネ性能に特化しており、エネルギー効率の向上を促す仕組みになっています。
これらを正しく理解し活用することで、建物の環境性能を高められるだけでなく、補助金や資産価値向上といった実用的なメリットも得られます。今後、持続可能な建築がますます重要視される中で、両制度の役割はさらに大きくなるでしょう。自分の立場や目的に合わせて適切な制度を選ぶことが、より良い建物づくりにつながります。




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