住宅性能評価書とは?設計・建設の違いやあとから取得する方法まで詳しく解説
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- 10月22日
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住宅購入時や建築時に耳にする「住宅性能評価書」。品質や性能を可視化し、信頼性を高めるこの評価書には、「設計住宅性能評価書」と「建設住宅性能評価書」の2種類があります。本記事では、それぞれの違いと役割、あとから取得できるかどうか、取得によるメリットなどを分かりやすく解説します。
住宅性能評価書とは?制度の基本
ここでは住宅性能評価書の概要について、みていきましょう。
制度の背景と目的
住宅性能評価書(以下、評価書)は、平成12年4月1日に施行された「住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)」に基づく制度です。この制度創設以前は、住宅の性能を表示する共通ルールがなく、消費者が住宅の品質を客観的に判断することが困難でした。
評価書制度の目的は、一般消費者には分かりにくい住宅の性能を等級に分けることで比較しやすくし、専門知識がなくても安心して優良な住宅を選べるようにすることです。国土交通大臣が登録した第三者機関である「登録住宅性能評価機関」が、統一された評価基準で住宅の性能を検査・評価します。
評価書が交付されるのは一定の基準を満たした住宅のみで、違法建築など基準に達していない住宅には交付されません。そのため、評価書を取得した住宅は国が認める一定の品質基準を満たしている証明といえるでしょう。
評価項目の構成
新築住宅の性能評価では、「10分野」に評価・表示のための基準が設けられています。このうち、必須分野は4つ。それ以外の分野は評価を依頼する人が任意に選ぶことができます。
評価項目は以下のように分類されています。
各項目は等級や数値で表示され、等級については数字が大きいほど性能が高いことを示しています。ただし、10分野の性能の中には、相反する関係のものもあります。例えば窓を大きくすると採光性は向上しますが、耐震性や断熱性が低下する可能性があります。
設計住宅性能評価書と建設住宅性能評価書の違い

評価書には設計段階と建設段階の2種類があります。それぞれの特徴と役割を理解し、目的に応じた評価書の取得を検討しましょう。
設計住宅性能評価書とは
設計評価書は、住宅の設計図書や仕様書などの書面を基に評価される書類です。建設工事が始まる前の計画段階で、設計内容が住宅性能表示基準に適合しているかを第三者機関が審査します。
設計評価は、設計段階で図面や計算書などを確認し、その内容を評価したうえで評価書が交付される制度です。そのため、着工後でも申請は可能です。
ただし、実際の施工状況は反映されていないため、設計通りに建設されるかどうかは別途確認が必要になります。設計評価書は、住宅ローンの事前審査や建築確認申請と併せて提出することも多く、建設評価書を取得する際の前提条件ともなっています。
建設住宅性能評価書とは
建設評価書は、実際の建設工事中および完成後の住宅を検査して交付される書類です。住宅の施工段階と完成段階の審査を経た評価結果をまとめた書面で、設計図書の内容が実際の住宅に反映されているかを確認します。
建設評価では、基礎工事や構造工事など、完成後には確認できない部分も含めて複数回の現場検査が実施されます。そのため、設計評価書よりも実際の住宅性能を正確に証明する効力があります。
建設評価書を取得するためには、設計評価書の取得が前提条件となっており、工事の進行に合わせて段階的な検査を受ける必要があります。
両方を取得するメリット
設計評価書と建設評価書の両方を取得することで、計画段階から完成まで一貫した品質管理が可能になります。設計内容の適切性と実際の施工品質の両方が第三者機関によって確認されるため、住宅の信頼性が大幅に向上します。
また、両方の評価書を取得した住宅では、万が一のトラブル時に指定住宅紛争処理機関(各地の弁護士会)に申請し、対応してもらうことが可能です。手数料は1件あたり1万円で、裁判によらない迅速で円滑な紛争処理が期待できます。
住宅ローンの金利優遇や地震保険の割引制度においても、建設評価書がより重視される傾向があるため、両方取得することで幅広い優遇制度を活用できる可能性があります。
住宅性能評価書をあとから取得することは可能か?

完成後の住宅でも評価書取得の可能性はありますが、条件や制約があります。住宅の状況に応じた最適な対応策を検討することが大切です。
あとから取得できるケース
設計評価書については、着工後でも申請は可能です。設計図書や仕様書が保管されており、建築確認済証があれば、工事中や完成後でも設計評価書の取得を申請できる場合があります。
建設評価書については、工事完了から間もない時期であれば取得できる可能性があります。施工記録や材料証明書などの必要書類が整備されており、施工業者の協力が得られる場合は、遡っての検査実施を検討できるでしょう。
また、既存住宅(中古住宅)については、新築時の評価とは異なる既存住宅性能評価制度が利用できます。中古住宅の場合は新築住宅のチェック項目(10分野32事項)と比べ項目が少なく、7分野27項目での評価が可能です。
難しいケースとその理由
建設評価書の取得が困難なケースとして、完成から長期間経過した住宅が挙げられます。建設評価では工事の各段階での現場検査が必要ですが、完成後には基礎工事や構造工事の状況を確認することができません。
また、設計評価書を取得していない住宅では、建設評価書の取得は原則として困難になります。設計評価書は建設評価書取得の前提条件となっているためです。
施工記録や材料証明書の不備、施工業者の廃業や非協力的な態度なども、あとからの取得を困難にする要因となります。特に建売住宅や中古住宅の購入では、こうした書類が引き継がれていないケースも多く見られます。
住宅性能評価書を取得するメリット

評価書の取得により、住宅の信頼性向上から経済的メリットまで、多面的な効果が期待できます。
住宅購入者・所有者の安心につながる
評価書があることで、住宅の性能が客観的な数値や等級で表示され、専門知識がない方でも住宅の品質を理解できます。耐震性や火災時などいざという時に命や財産を守るために重要な項目も、第三者である専門家にきちんとチェックしてもらえるため安心して暮らせるでしょう。
特に、完成後には確認が困難な構造部分や基礎部分についても、工事段階での検査により品質が保証されます。施工ミスや手抜き工事の防止効果も期待でき、長期的な住宅の安全性確保に寄与します。
また、住宅の劣化のしにくさや維持管理のしやすさも評価項目に含まれているため、将来的なメンテナンス計画の策定にも役立ちます。
売却・査定・融資面での評価向上
評価書を取得した住宅は、住宅性能評価を取得していない建築物よりも高額で売却できる可能性が高まります。客観的な性能証明により、買い手に対して安心感を提供でき、競合物件との差別化が図れます。
不動産査定においても、性能が数値化されていることで適正な評価を受けやすくなります。特に省エネルギー性能や耐震性能が重視される現在の市場では、これらの性能を証明できることが大きなアドバンテージとなるでしょう。
住宅ローンにおいても、住宅ローンの金利の優遇や地震保険料の割引などさまざまなメリットがあります。フラット35では一定の条件を満たす場合に金利引き下げが適用され、総返済額の軽減効果が期待できます。
各種優遇制度への対応がしやすい
評価書があることで、住宅取得に関する補助金や税制優遇措置を利用しやすくなります。省エネルギー関連の補助金では、住宅の省エネ性能を証明する書類として評価書が有効です。
地震保険では、取得した耐震等級によって地震保険の割引を受けることができます。耐震等級3では割引率が50%、2で30%、1(建築基準法レベル)で10%となっており、長期的な保険料負担の軽減につながります。
住宅取得等資金の贈与税非課税措置においても、住宅の性能に応じて非課税限度額が設定されているため、評価書により高い性能を証明できれば、より多くの非課税枠を活用できる可能性があります。
取得手続きと費用の目安

評価書の取得費用は、住宅の規模や評価項目数によって変動します。一般的には設計住宅性能評価書・建築住宅性能評価書それぞれ10〜20万円前後、両方取得する場合は15万〜30万円前後が目安です。
戸建住宅の場合、必須4分野のみの評価であれば16万円前後が相場となりますが、選択項目を追加したり、住宅の延床面積が大きくなったりすると費用は上積みされます。評価機関によっても料金体系が異なるため、複数の機関で見積もりを取ることをお勧めします。
手続きについては、設計評価書は設計段階で申請し、建設評価書は工事開始前に申請する必要があります。工事の進行に合わせて複数回の現場検査が実施されるため、施工業者との事前調整が重要になります。
まとめ
住宅性能評価書は、住宅の品質と信頼性を証明する重要な資料です。設計段階・建設段階の両方で評価を取得すれば、ローン優遇や資産価値の向上など多くのメリットがあります。あとからの取得も一部可能なため、検討してみる価値は十分にあるでしょう。
評価書の取得には一定の費用がかかりますが、長期的な視点で考えれば、住宅ローンの金利優遇や地震保険の割引、将来の売却時の価値向上などにより、投資効果を期待できます。
住宅の購入や建築を検討されている方は、早い段階で評価書の取得についても併せて検討することをおすすめします。




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