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CASBEEでSランクを取得するメリットは?評価方法もあわせて紹介

  • soccer31415mt926
  • 9月13日
  • 読了時間: 10分

環境に配慮した建物づくりを進める中で「CASBEEのSランクって実際どれほど価値があるの?」と気になる方もいるでしょう。CASBEEは、建物の環境性能を5段階で評価する制度で、最高評価であるSランクを取得することで多くのメリットが得られます。


本記事では、評価方法や各種CASBEEのランクの違い、Sランク取得による環境・経済・ブランド面でのメリットなどを紹介します。


CASBEEの評価方法は?

CASBEEの評価方法は?

CASBEEは、建物の環境性能を定量的に評価し、持続可能な建築の普及を目的とした制度です。評価対象は、下記の4分野に分類され、設計から運用までの建物全体の環境特性が評価されます。


  • 建築

  • 戸建

  • 不動産

  • ウェルネス


評価の軸は「環境品質(Q)」と「環境負荷(L)」の2つです。


環境品質では、エネルギー効率や資源の有効利用、室内環境の快適性や健康への配慮といった、建物の環境性能そのものが問われます。環境負荷では、CO₂排出量や廃棄物、騒音、水資源の消費など、建物が外部に与える影響を測定します。


これらの評価は、有資格の評価員によって行われ、各項目にスコアが付けられます。最終的なスコアは「Q(環境品質)/L(環境負荷)」の比率として算出され、その結果に基づき、下記の4〜5段階でランク付けされます。


  • S

  • A

  • B+

  • B

  • C


特に、Sランクは環境配慮が非常に優れた建物として高く評価されます。


CASBEEは、設計や運用の改善ポイントを明確化できる実用的な指標であり、環境性能の見える化を通じて、企業や自治体によるサステナブルな建築の推進に貢献しています。


CASBEEのランク

CASBEEのランク

CASBEEには、主に「建築」「戸建」「不動産」「ウェルネス」の4つのカテゴリーがあり、それぞれに特化した評価基準が存在します。


ここでは、それぞれのカテゴリーごとのランクについて紹介します。


CASBEE「建築」のランク


CASBEE「建築」部門は、建物の環境性能を定量的に評価し、持続可能性を示すための制度です。


評価は「環境品質(Q)」と「環境負荷(L)」の両面から行われ、BEE(環境効率)の値を算出することでランク付けされます。※BEE = 環境品質(Q: Quality) ÷ 環境負荷(L: Load)


評価の主な視点は、下記です。


◼︎環境品質(Q)

  • 室内環境

  • サービス性能

  • 室内外環(敷地内)


◼︎環境負荷(L)

  • エネルギー消費量

  • 資源利用効率

  • 廃棄物・CO₂排出など外部への環境影響



BEE値に応じて、下記の5段階でランク付けされます。


  • SランクBEE値が3.0以上、かつ環境品質(Q)が50点以上。非常に高い環境性能を持つ建築物

  • AランクBEE値が1.5〜3.0。Sには満たないが、一般的な建築物より高い環境性能と評価される

  • B+ランクBEE値が1.0〜1.5。標準的と判断される評価水準。民間認証を取得する場合、目標とされることが多い

  • B−ランク BEE値が0.5〜1.0。標準よりやや劣る環境性能

  • Cランク BEE値が0.5未満。環境性能が劣っているとされ、設計改善が推奨される


CASBEE「戸建」のランク


CASBEEの「戸建」部門では、戸建住宅の環境性能を評価し、持続可能な住まいの実現を支援しています。


評価の基準には、下記などが含まれます。


◼︎環境品質(Q)


  • 室内環境を快適・健康・安心にする

  • 長く使い続ける

  • まちなみ・生態系を豊かにする


◼︎環境負荷(L)


  • エネルギーと水を大切に使う

  • 資源を大切に使いゴミを減らす

  • 地球・地域・周辺環境に配慮する


CASBEE建築と同様に、住宅の環境性能を 環境品質(QH)/環境負荷(LH) の比率(BEEH値)によって評価し、5段階でランク付けします。


  • SランクBEEH値が3.0以上かつ環境品質(QH)が一定水準以上。 「非常に優れている」と評価され、最高ランクの住宅

  • AランクBEEH値が1.5〜3.0未満。 Sランクには満たないものの「大変良い」とされる住宅

  • B+ランクBEEH値が1.0〜1.5未満。「良い」と評価され、標準的な住宅の基準。認証取得を目指す際、多くの住宅が到達目標とする水準B−ランク

  • BEEH値が0.5〜1.0未満。 「やや劣る」とされ、改善が望まれる住宅Cランク

  • BEEH値が0.5未満。 「劣る」と判断され、設計段階で大幅な改善が推奨される住宅



例えば、高効率な設備機器の導入や、採光・通風を活かした設計などが高評価につながります。CASBEE「戸建」は、建築主や設計者にとって、環境配慮の具体的な目標を示す指標として有効です。


CASBEE「不動産」のランク 


CASBEE「不動産」は、商業施設やオフィスビルなどの不動産開発物件を対象に、環境配慮の度合いを可視化する評価手法です。


下記が評価対象となり、結果は4段階で示されます。


  • エネルギー/温室効果ガス 

  • 資源利用/安全

  • 生物多様性/敷地

  • 屋内環境


具体的には、 下記のようにS・A・B+・Bの4段階でランク付けされます。最低のBランクであっても「必須項目を満たしている」と評価され、環境性能の一定水準が保証されます。


  • Sランク 合計得点が78点以上。環境性能が「非常に優れている」と評価される

  • Aランク 合計得点が66点以上。Sランクには満たないものの「大変良い」と評価される

  • B+ランク 合計得点が60点以上。「良い」建築物として評価される

  • Bランク 合計得点が50点以上。必須項目を満たしていることを前提に「一定の環境性能を持つ」と認められる


このランクは、環境性能の証明にとどまらず、経済的価値の向上にもつながります。評価の高い不動産は、入居者からの信頼を得やすく、賃料水準の維持や空室リスクの低減、投資家からの評価向上といったメリットが期待されます。


CASBEE「ウェルネス」のランク


CASBEEの「ウェルネス」ランクは、建物の環境性能に加え、利用者の健康や快適性への配慮を重視する評価制度です。環境負荷の低減だけでなく、人が心身ともに健やかに過ごせる空間づくりが評価の中心となります。


評価項目には、下記などが含まれます。


  • 健康性・快適性

  • 利便性

  • 安全性

  • プログラム

  • 運営管理


結果は、下記の5段階で評価されます。


  • Sランク 総合得点 75点以上。非常に快適で健康的なオフィス環境と評価される

  • Aランク 総合得点 65点以上。Sには満たないが、優れたオフィス環境と認められる

  • B+ランク 総合得点 50点以上。標準的もしくはそれ以上の快適性があると判断される

  • B−ランク 総合得点 40点以上。快適性が標準より劣ると評価される

  • Cランク 総合得点 40点未満。快適性が低い建築物と判断される


例えば、日照条件を考慮した設計や適切な換気・空調による室内空気の質の確保は、利用者のストレス軽減や健康維持に直結します。こうした設計は、生産性や満足度の向上にも寄与します。


ウェルネスランクは、建物の差別化や価値向上にも有効です。健康に配慮した空間は入居者から高い評価を得やすく、長期的な利用や物件の収益安定にもつながります。そのため、企業や不動産開発者にとっても、投資価値の高い指標といえます。


CASBEEでSランクを取得するメリット

CASBEEでSランクを取得するメリット

CASBEEで最高評価のSランクを取得することは、単に環境への配慮を示すだけでなく、さまざまなメリットをもたらします。ここでは、CASBEEでSランクを取得するメリットを紹介します。


環境への配慮 


CASBEEでSランクを取得することは、高い環境性能を客観的に証明できる手段です。Sランクは、省エネ性、温室効果ガスの削減、資源の有効活用といった環境負荷の低減において、極めて優れた水準に達していることを示します。


Sランクを目指す建物では、設計段階から環境配慮型の素材や省エネ技術が導入され、建物のライフサイクル全体における環境影響の最小化が図られます。例えば、高断熱建材や高効率設備の採用、再生可能エネルギーの活用などが求められます。


さらに、地域環境との調和も評価の一環です。緑地の整備や雨水活用、生態系への配慮といった取り組みも、Sランク取得の加点要素となります。


管理・運用コストの削減 


CASBEEでSランクを取得した建物は、運用・管理コストの削減にも直結します。省エネ性や資源効率を重視した設計により、日常的なエネルギーや水の消費が抑えられ、電気代・水道代といったランニングコストを低減できます。


例えば、高効率な空調設備やLED照明、断熱性能の高い建材の採用により、エネルギー消費を最小限に抑えられます。加えて、太陽光発電や雨水利用システムの導入により、再生可能資源の活用が進み、外部エネルギーへの依存も減少します。


また、Sランク取得に向けた設計では、メンテナンス性や耐久性も重視されるため、長期的な修繕費用を抑制できます。さらに、空調や照明の自動制御システムなど、効率的な運用を支援するスマート技術の導入も評価対象となるため、日常の管理業務も省力化できます。


資産価値の向上


CASBEEでSランクを取得すると、建物の資産価値が高まります。高い環境性能は、持続可能性が重視される現代において、投資家や購入者にとって大きな魅力となり、将来的な売却や賃貸時の競争力を強化します。


Sランクの建物は、エネルギー効率や運用コストの低さから長期的な経済性にも優れ、入居者やテナントにとってもメリットが明確です。こうした経済的利点により、安定した賃料収入や高い稼働率が期待でき、収益物件としての価値が向上します。


さらに、環境配慮型建築としての社会的評価は、企業のブランドイメージや地域での信頼性を高める要因にもなります。


ブランドイメージの向上


CASBEEでSランクを取得することは、企業や建物のブランドイメージを高める強力な手段です。高い環境性能を備えた建物であることが客観的に証明されるため、企業は「環境に配慮した先進的な存在」として社会的な評価を得やすくなります。


特に、環境意識の高まりとともに、消費者や投資家は持続可能な取り組みを行う企業を重視する傾向にあります。Sランクの取得は、企業のCSR(企業の社会的責任)にも直結し、信頼性の向上や好感度アップにつながります。


また、Sランク建物はメディアや業界からの注目も集めやすく、広報やプロモーション活動でも強みとなります。環境性能の高さをアピールできることは、企業の差別化要素となり、新たな顧客獲得や競争優位性の確保に貢献します。


快適性の向上 


CASBEEでSランクを取得した建物は、高い快適性を備えており、居住者や利用者にとって質の高い環境を提供します。温度・湿度の安定、遮音性、自然光の取り入れなどが最適化されることで、住宅やオフィスでのストレス軽減や集中力の向上が期待できます。


特にオフィスビルでは、快適な環境が従業員の生産性に直結します。空調や照明、換気といった基本設備に加え、空間設計や素材選定にまで配慮されたSランクの建物は、働く人にとって心地よく、パフォーマンスを高める場となります。


また、Sランク建物では最新の技術やデザインが導入されていることが多く、快適性と環境性能を両立しています。たとえば、高性能な空調システムや調湿機能付き断熱材、低VOC(揮発性有機化合物)素材の使用などにより、健康面でも安心な空間が実現されます。


CASBEEでSランクを獲得している代表的な建築物一覧

CASBEEでSランクを獲得している代表的な建築物一覧

CASBEEでSランクを取得した建築物は、環境性能の高さを象徴する存在であり、持続可能な建築のモデルケースとして注目されています。


横浜市と神戸市でSランクを取得している建築物を紹介します。


◼︎横浜市


  • 日産自動車グローバル本社......オフィス

  • みなとみらいグランドセントラルタワー......オフィス

  • 日揮グローバル本社ビル......オフィス

  • ヨコハマ グランド インターコンチネンタル ホテル......宿泊施設

  • TOTO 横浜ショールーム......商業施設


◼︎神戸市


  • 神戸製鋼所 本社新館......オフィス

  • 三菱電機株式会社 神戸製作所棟......研究施設

  • 神戸市医療センター中央市民病院......医療施設

  • 阪神高速神戸管理局ビル......公共施設



まとめ


CASBEEのSランク取得は、環境性能の向上に加え、コスト削減、資産価値やブランド力の強化といった多面的なメリットをもたらします。快適な空間づくりにも寄与し、居住者満足度の向上にもつながる点が特徴です。


今後、環境配慮と経済性を両立する建物づくりが求められる中、Sランクは新たなスタンダードとして注目され、企業の競争力や社会的信頼を高める鍵となるでしょう。

 
 
 
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