2018年に、ZEH-M(マンション)もZEH支援事業の一環である補助金対象になりました。国はZEHの普及に向けてロードマップも作成し、ZEH住宅のさらなる増加が期待されています。
一方、ZEH-Mの仕組みについて知らない人も少なくありません。ZEH-Mに関する理解を深め、新築・増改築時の参考にしてみてください。
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ZEH-M(マンション)とは
ZEH-M(マンション)とは「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス・マンション」の略で、住宅で消費するエネルギーをゼロに近づけることを目指す省エネ住宅の1つです。
住宅の断熱性や省エネ性能を上げる・自家発電(太陽光発電など)でエネルギーをつくることで、「年間の一次エネルギー消費量」の±0を目指します。
一次エネルギー消費量は、暖冷房・空調・給湯・換気・照明が対象。テレビや冷蔵庫などを含む家電製品は、一次エネルギー消費量の対象外となります。
ZEH住宅への補助金制度(ZEH支援事業)は2012年に開始されていたものの、補助金対象が「新築戸建てのみ」でした。そこで国はZEH化の普及拡大を目指すため、2018年度にマンションなどの集合住宅も補助金の対象としたのです。
ZEHマンションのメリット・デメリット
ZEH-Mには、光熱費の節約や快適な住み心地などのメリットがあります。一方で、通常の住宅と比べるとコストが高くなりがちといったデメリットも見過ごせません。
メリット・デメリットを理解、納得した上でZEHマンションを検討しましょう。
メリット
ZEHマンションには、住み心地がよい点をはじめさまざまなメリットがあります。
夏は涼しく冬は温かいので住み心地がよい
光熱費を抑えられる
ヒートショックを予防できる
災害時でも安心できる
売電収入を得られる可能性がある
融資が受けやすくなる(大家さんの場合)
ZEHマンションのメリットは、住み心地がよい・光熱費を抑えられる点です。ZEH住宅は断熱性が高いため、1年を通して暖房や冷房などの光熱費を抑えられるのです。
また屋内温度の差が少ないため、急激な血圧上昇によって心筋梗塞や脳卒中につながる「ヒートショック」を予防できます。ZEH住宅に住むことで健康に過ごせるというメリットもあるのです。
さらに、蓄電池・太陽光発電を活用すれば災害時でも安心。大家さんによっては、発電したエネルギーで売電収入を得られるケースもあります。
ZEHマンションは「資産価値が高い」と判断されるため、銀行からの融資を受けやすいというメリットもあります。
デメリット
ZEHマンションには、主にコスト面でいくつかのデメリットがあります。
家賃が高くなる
建築コストがかかる
屋根の間取りやデザインが限られるケースがある
発電状況は天候によって左右する
ZEHマンションは断熱性や省エネ性能を高めるために、通常の住宅と比べて建築コストが高くなります。そのため賃貸の場合は、家賃が相場よりもやや高くなる傾向があるのです。
また屋外に太陽光パネルを設置するため、屋根・間取りのデザインが限られるケースもあります。
ただし建築コストについては、光熱費の削減や売電収入によって実質±0を目指せます。売電収入は天候によって左右しますが、長期的に考えればコスパがよいと言えるでしょう。
ZEHマンションのロードマップ
日本では、ZEHマンションの普及拡大を目指すために2030年度までのロードマップを定めています。
2017年度に定義確立(必要に応じて定義の見直しを行う)
2017年度〜2020年度に事業者への建築補助を行い、必要に応じて見直し
ZEHデベロッパーの登録制度確立と進捗管理
多様な建築プランでの設計ノウハウの確立、便益の評価方法の検討、その後設計ノウハウの標準化
補助事業と連携した住宅仕様・地域ごとなどの便益情報の収集と広報
省エネ設計・評価システムの開発と標準化、売電事業・低コスト化の推進など
上記を順次達成し、2030年には集合ZEHの普及加速・新築住宅の半数でZEH実現を目指しています。
ZEHマンションの評価基準
ZEH-Mは、以下4つの区分に分けて評価基準を設けています。
ZEH-M:1〜3階建て
Nearly ZEH-M:1〜3階建て
ZEH-M Ready:4〜5階建て
ZEH-Orient:6階建て以上
区分で分けている理由は、マンションの性質上、規模・階層によって太陽光発電設備や発電量に対する期待値が異なるためです。
住棟での評価
住戸での評価
※再エネ:再生可能エネルギー
【2022年版】ZEHマンションの補助金
2018年以降、集合住宅・マンションもZEH基準を満たすことで補助金の対象となりました。2021年度もさまざまな補助金制度が実施されており、2022年度の公募も一部決定しています。
ただし2022年4月現在、公的機関からの詳しい情報は解禁されていません。下記では3つの補助金制度を紹介しますが、金額については現時点で確認できた情報を基にしています。変更の可能性がありますので、最新情報は都度ご確認いただきますようお願い致します。
ネット・ゼロ・エネルギーハウス支援事業
ネット・ゼロ・エネルギーハウス(ZEH化推進)支援事業は、地域脱炭素ロードマップの実践として「ZEH-Mの定義」を満たしている住宅に対して補助金が出る制度です。
2021年度は低中層〜超高層までの集合住宅・マンションにも、階層によって補助金が組まれました(下記は2021年度実績)。
集合住宅の省CO2化促進事業
集合住宅の省CO2化促進事業は、省エネ・省CO2化・断熱化リフォームの支援、災害時に備えた建築を強化する集合住宅に補助金が支給される制度です。経済産業省連携事業の1つであり、2022年版の予算は6,450億円を要求額としています。
こどもみらい住宅支援事業
こどもみらい住宅支援事業は、子育て支援および2050年カーボンニュートラルの実現の観点から、省エネ性能を有する住宅ストック形成を図るための制度です。
子育て・若者夫婦世帯の高性能省エネ住宅の取得や、省エネ改修などにかかる負担の軽減、住宅分野の脱炭素化推進を目的としています。
対象条件
新築住宅購入時の補助額:最大100万円
1戸あたり上限補助額:30万円~60万円(申請金額5万円以上が補助対象)
新築購入は18歳未満の子を有する子育て世帯、または39歳以下の若者夫婦世帯が対象
リフォームへの補助金は年齢制限なし
ZEHデベロッパーについて
ZEHデベロッパーとは、ZEHマンション普及の役割を担う建設会社・マンションデベロッパーなどを指す言葉です。経済産業省は「集合住宅におけるZEHの定義」を定めて普及促進するために、2018年にはZEHデベロッパーの登録制度を開始しています。
ZEHデベロッパーはZEH化推進のために登録・公表している優良な建築主と言えるのです。補助金の中には、ZEHデベロッパーを介した申請が条件の制度もあります。
ZEHマンションにかかるコストのこと
ZEHマンションは太陽光発電設備などが必要なため、建設コストや家賃設定が高くなりがちです。ただし光熱費の削減や売電収入によって、実質のコスト±0を目指せます。
下記では、一般的に考えられる一般住宅とのコストを一覧にしたものです。
一般住宅にかかる月々の家賃・光熱費は、約9.5万円です。一方、ZEHマンションは売電収入を合わせると、月々に実際かかるコストは9万円となります。
家賃や建築コストだけを見ると「高い」と思われがちですが、実際に発生するコストは±0に近い数字を目指せるのです。
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