2025年|法改正で省エネ適判の対象建築物はどう変わる?省略できる?
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- 9月13日
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更新日:2 日前
2025年4月の建築物省エネ法改正により、省エネ適合性判定(省エネ適判)の対象が大きく変わります。これまで対象外だった小規模建築物や住宅も原則適用となり、建築確認手続きとの一体化や4号特例の廃止など、設計・施工の流れに影響を及ぼす内容が盛り込まれています。
本記事では、改正で何が変わるのか、どの建築物が省略可能なのか、申請手順や注意点を解説します。
2025年4月からの省エネ適判改正で何が変わる?

2025年4月に施行される建築物省エネ法の改正により、省エネ適合性判定(省エネ適判)の対象が大幅に拡大します。この変更は、建築物のエネルギー効率を向上させるための重要なステップであり、持続可能な社会の実現に寄与することが期待されています。
ここでは、2025年4月からの省エネ適判で何が変わるかについて解説します。
全ての新築住宅・非住宅に対象が拡大される
これまで省エネ適判の対象外とされていた小規模な住宅や非住宅も、2025年4月以降は原則として適用対象となります。すべての新築建物に対して省エネ基準の適合が義務付けられることで、規模に関係なく断熱性能や設備の省エネ性が求められるようになります。
この変更は、設計の初期段階から省エネ性能を意識した建築計画を促すものであり、建築主や設計者には基準への理解と準備が求められます。従来と同じ設計・施工フローでは対応が難しい場合もあるため、社内体制や業務プロセスの見直しが必要になるケースもあるでしょう。
建築確認手続きの中で省エネ適判を行う
改正後は、省エネ適判が建築確認の手続きと一体化され、申請時点で省エネ性能の確認が必要になります。これにより、従来は別手続きだった省エネ審査が統合され、手続き全体の簡素化・効率化が図られます。
省エネ基準に適合しない計画は確認済証を得られず、着工できません。そのため、早期の段階で省エネ要件を満たすかどうかを評価し、必要に応じて設計の修正を行うことが重要です。
事後的な対応では手戻りや工期の遅れが生じるため、計画段階からの制度理解が不可欠です。
2025年4月以降に着工するものから適用される
改正制度は、2025年4月1日以降に着工する建築物から適用されます。
2025年3月31日以前に着工された建物については、現行制度が適用されるため、施行日前後で対応要件が異なります。設計や確認申請のタイミングに関わらず、「着工日」が制度の適用条件となる点には注意が必要です。
特に、年度末や工事スケジュールに関わる建築計画では、着工日を基準としたスケジュール調整が必要になります。設計・施工業務の円滑な移行に向けて、早めの対応が求められます。
建築物省エネ法改正の5つのポイント

2025年4月の法改正により、省エネ適合性判定(省エネ適判)に関する重要な変更が行われます。ここでは、その改正の主要なポイントを5つにまとめて解説します。
届け出義務が廃止される
2025年4月の法改正により、省エネ適合性判定(省エネ適判)に関する事前の届け出義務が廃止されます。設計者や施工者は別途の提出手続きを省略できるため、建築確認と省エネ適判を同時に進めることが可能です。
手続きが簡素化される一方、省エネ基準への適合そのものは引き続き必須です。従って、届出が不要となっても、省エネ性能を満たさない建築計画は着工できません。
制度上の負担は軽減されますが、計画初期から適合性を確保する責任は変わらないことに留意してください。
一部省エネ適判が不要な建築物もある
法改正によって原則すべての新築が適判の対象となる一方、特定条件を満たす小規模建築物や用途限定の建物については例外として適用除外とされるケースがあります。これにより、一定の範囲では設計や申請の柔軟性が確保されます。
ただし、省エネ適判が不要でも、地域の条例や他の法令によってエネルギー性能に関する基準が求められる場合があります。制度の適用有無にかかわらず、法的条件を精査したうえでの計画立案が不可欠です。
2025年3月31日までに着工した建築物は現行制度の対象となる
改正内容は2025年4月以降に着工する建築物に適用され、それ以前に着工した建物には現行制度が適用されます。したがって、設計・確認申請の時期にかかわらず、着工日が制度適用の分岐点となります。
特に、小規模建築物などで改正によって新たに対象となる建築計画を進めている場合は、早期着工によって従来の制度を利用できるかどうかを見極めることが重要です。スケジュール管理次第で、コストや設計対応に大きな差が生じる可能性があります。
4号特例が廃止され一部の小規模建築物も義務化する
従来、省エネ適判の対象外とされていた「4号特例」が廃止され、延床面積300㎡未満の建物や特定用途の建築物も原則として適用対象になります。これにより、小規模建築でも省エネ基準の順守が求められるようになります。
今後は、4号特例を前提とした設計手法が通用しなくなるため、これまで該当していた建築主や設計者は、新制度への理解と設計対応の見直しが必要です。基準の明確化により、小規模物件でも一定水準のエネルギー性能が担保されるようになります。
増改築部分も適合が必要になる
2025年4月の建築物省エネ法改正により、増改築部分にも省エネ適判が義務化されます。
これまで一部の条件を満たす場合は適判の対象外とされていましたが、今後は原則としてすべての増改築に対して省エネ基準への適合が必要になります。
増改築では、既存建物との整合を図りつつ、新設部分について断熱性能や設備の効率性などが基準を満たしていることが求められます。
設計者や施工者は、省エネ対応を前提とした仕様計画を立てる必要があります。
この変更は、建物全体のエネルギー性能向上を目的としたものであり、エネルギーコストの抑制や環境負荷の低減にもつながります。増改築を検討する際は、早い段階で省エネ基準を設計に組み込むことが重要です。
省エネ適判の改正による注意点

2025年4月からの省エネ適合性判定(省エネ適判)の改正に伴い、建築物の設計や施工において注意すべき点がいくつかあります。
ここでは、省エネ適判の改正における注意点を紹介します。
省エネ適合判定通知書が交付されないと着工できない
2025年4月の建築物省エネ法改正により、省エネ適合判定通知書の交付が着工の必須条件となります。建築確認申請時に省エネ適判を受け、通知書を取得しなければ、工事に着手できません。
この改正は、設計段階で省エネ基準への適合を確実に担保し、建物のエネルギー性能を計画段階から確保することを目的としています。適合判定が制度的に義務化されることで、環境負荷の低減や光熱費削減といった効果も期待されます。
一方、通知書の交付が着工の条件となるため、設計スケジュールや確認申請の段取りに遅れが生じると工期全体に影響を及ぼす可能性があります。
設計者や建築主は、必要書類や省エネ計算書などをあらかじめ整備し、判定手続きをスムーズに進める準備が不可欠です。特に、繁忙期や大型案件では早めの対応が重要になります。
仕様変更が生じると手続きが必要
2025年4月の省エネ適合性判定(省エネ適判)の改正により、設計・施工中に省エネ性能に影響する仕様変更があった場合、再度の手続きが必要となります。
省エネ基準への適合状況が変わる可能性があるため、変更後の内容について審査を受けなければ着工や継続施工が認められません。
例えば、断熱材や窓の仕様変更、空調・給湯設備の入れ替えなどは、建物のエネルギー性能に直接影響を与えるため、再判定の対象になります。この確認により、建築物が常に基準を満たしていることが制度的に担保されます。
手続きにあたっては、変更内容をまとめた書類の提出と、審査機関による再確認が必要です。省エネ適判は建築確認と一体化されているため、再手続きが設計や施工スケジュールに影響を与える可能性があります。
変更の可能性がある場合は、事前に手続きの流れや必要書類を把握しておくことが重要です。
省エネ適判を申請する流れ

2025年4月の法改正により、省エネ適合性判定(省エネ適判)の申請は、建築確認と同時に行う必須の手続きとなります。申請の基本的な流れは以下の通りです。
まず、建築主または設計者は、省エネ基準への適合を証明する書類を準備します。主に下記のような書類が含まれ、建築確認申請と同時に提出する必要があります。
設計図
エネルギー消費量の計算書
省エネ計画書 など
提出後、書類は指定審査機関により審査されます。設計が省エネ基準に適合しているかどうかを評価され、不備があれば補正の指示が入ることもあります。
適合が確認されると、省エネ適合判定通知書が交付され、これをもって着工が可能です。
注意すべきは、申請後に設計や設備の仕様変更が生じた場合、再度の申請や修正手続きが必要になる点です。そのため、設計段階から省エネ基準を確実に満たす計画を立て、早めに書類を揃えましょう。
省エネ適判が省略される場合は?
2025年4月の法改正では、省エネ適合性判定(省エネ適判)の対象が大幅に拡大される一方、一定の条件を満たす建築物については省略が認められます。これにより、一部の設計・施工における事務負担の軽減が期待されます。
省略が認められるのは、設計内容や構造・設備が基準に照らして影響が軽微と認められる場合に限られます。
小規模であっても、原則は適判対象とされるため、個別に審査機関へ確認することが重要です。対象となる建物では、省エネ適判の手続きを経ることなく設計・施工を進めることが可能です。
ただし、省略が可能かどうかは明確な条件が定められており、建築主や設計者は計画段階でその該当可否を確認することが不可欠です。これにより、不要な手続きを回避し、効率的にプロジェクトを進められます。
なお、省エネ適判が省略されても、他の法令や自治体の条例による規制は適用される可能性があるため、別途確認が必要です。省略対象の判断を誤らないよう、最新の制度内容を把握し、慎重に対応することが求められます。
まとめ
2025年4月の省エネ法改正により、小規模建築物や住宅も原則として省エネ適判の対象となり、設計・施工のあり方が大きく変わります。建築確認との一体化や4号特例の廃止も含め、これまでの制度運用は大きく見直されるでしょう。
新基準に対応するためには、早期の準備と制度理解が不可欠です。省エネ適判の確実な対応は、建築の質を高めるだけでなく、持続可能な社会への貢献にもつながります。