工場の省エネ適判とは?計算・手続き方法、対象外になるケースを解説
- soccer31415mt926
- 9月13日
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更新日:2 日前
工場の建設や増改築を検討していると、省エネに関する手続きが必要になるケースがあります。特に「省エネ適判」は内容が複雑で、どこから手をつけるべきか悩む方も多いでしょう。
本記事では、省エネ適判の対象範囲や計算基準、具体的な評価対象設備、申請手続きの流れなどを解説します。適切な準備でスムーズに手続きを進めましょう。
省エネ適判の対象・対象外となる工場は?

工場における省エネ適合性判定(省エネ適判)は、エネルギーの効率的な利用を促進するための制度です。「延べ床面積300㎡以上」の工場は、建築物省エネ法により省エネ基準への適合が義務付けられ、省エネ適合性判定(省エネ適判)の対象です。
審査では、以下の内容が確認されます。
設計図書
エネルギー消費量の計算書
断熱性能
設備機器の省エネ性能
一方、下記のいずれかに該当する場合は、原則として省エネ適判は不要です。
延べ床面積300㎡未満 ※「説明義務」を受ける必要があります
壁を有しない、または常時開放面積が1/20以上の高い開放性を持つ用途の建築物
特定用途:自動車車庫、自転車駐車場、畜舎、堆肥舎、観覧場、スケート場、水泳場、神社、寺院など
都市計画区域外に建設され、建築確認が不要な場合
既存建物の軽微な増改築や設備変更
ただし、計画内容によって判断が分かれるため、設計初期段階で専門機関への確認が重要です。
工場における省エネ計算の方法

工場の省エネ計算は、エネルギー効率を向上させるための重要なステップです。省エネ適判を受けるためには、正確な計算が求められます。ここでは、工場における省エネ計算の方法について詳しく解説します。
工場の省エネ計算に用いられる基準
工場の省エネ計算は、エネルギーの効率的な使用状況を把握し、改善策を立てるうえで不可欠です。この計算は、国の「省エネルギー法」や各自治体の条例、業界団体のガイドラインなど、複数の基準に基づいて行われます。
エネルギー消費量の算出では、設備の種類、運転条件、稼働時間などの要素を考慮します。さらに、設備ごとの使用量を正確に把握することで、エネルギー効率の高い機器や改善の必要な箇所を特定できます。
これらの基準は、技術の進展や制度の変更に応じて定期的に見直されるため、常に最新情報を確認することが重要です。特に新しい設備や運用方法を導入する際は、従来の基準が適用できない場合もあるため、注意が必要です。
省エネ適判の評価対象となる具体的な設備
省エネ適判では、工場内の主要なエネルギー消費設備が評価の対象です。評価を通じて、エネルギー効率の高い設備の導入と運用改善が求められます。
空調設備・冷却設備は温度管理に不可欠であり、エネルギー消費の大部分を占めます。高効率の冷却機器や熱交換器を導入することで、消費エネルギーの削減が可能です。
照明設備も評価項目の一つです。LED照明や高効率蛍光灯の採用により、消費電力を抑えつつ十分な照度を確保できます。さらに、昼光利用や照度センサーの活用により、無駄な電力消費を防ぐ設計が推奨されます。
また、モーター・ポンプなどの動力設備も重要です。高効率モーターの採用や「インバータ制御(可変速ドライブ)」による最適運転により、エネルギー使用を最小限に抑えることができます。
これらの設備は、省エネ適判における評価の中心であり、設計段階から基準適合を意識した仕様とすることが重要です。基準未達が判定されれば、改善措置が求められる可能性があるため、事前の十分な確認が必要です。
エネルギー消費量の計算対象外となる部分
省エネ適判におけるエネルギー消費量の計算では、すべての設備や活動が対象になるわけではありません。評価の精度と合理性を保つため、以下のような部分は一般的に計算対象から除外されます。
まず、製品の試作や研究開発など、恒常的な生産活動に該当しない用途の設備は対象外とされるケースが多くあります。これらは通常の運転状態を示すものではないため、適正な省エネ評価には含めないのが原則です。
倉庫や事務所など、工場の生産機能とは直接関係のない付帯施設におけるエネルギー使用も、主たる評価対象から外される傾向があります。こうした設備は生産工程に直接影響を与えないため、計算から除外されることが一般的です。
季節限定で稼働する設備や、イベント・点検対応などの一時的な運用に伴うエネルギー消費も、継続的な稼働を前提とする評価にはなじまないため、対象外とされる場合があります。
工場の省エネを計算する2パターンの方法

工場の省エネ計算には、主に「標準入力法」と「モデル建物法」の2つがあります。それぞれ特徴が異なり、目的や状況に応じて適切な方法を選択することが求められます。
ここでは、工場の省エネを計算する2パターンの方法について解説します。
補助金申請に必須の「標準入力方法」
工場が省エネ適判を受け、補助金を申請する際には、「標準入力方法」が必須となります。この方法は、実際のエネルギー使用状況を詳細に分析し、設備ごとの性能や運転条件に基づいて消費量を正確に算出する仕組みです。
例えば、空調や照明、動力設備など、各機器の仕様や使用時間を個別に入力し、それらの合計から工場全体のエネルギー効率を評価します。省エネ効果を定量的に示せるため、補助金の審査でも説得力を持たせることができます。
この方法はデータの正確性が問われるため、事前の調査や情報整理が欠かせません。ただし、適切に活用すれば、省エネの効果を明確に示せるだけでなく、補助金獲得の可能性を高める強力な武器になります。
コストや手間を抑えられる「モデル建物法」
省エネ適判において、コストや手間を抑えたい場合は「モデル建物法」が有効です。この方法では、実際の工場データを詳細に入力するのではなく、国が定めた標準的な建物モデルを基に省エネ性能を評価します。
モデル建物法は、建物の形状や使用設備、運用条件などを基準モデルと比較することで、基準への適合状況を判定します。複雑なエネルギー消費計算や現場でのデータ収集を省略できるため、準備時間や費用を大幅に削減できるのが特徴です。
特に、新築工場や大規模改修において適用しやすく、迅速に省エネ適判の手続きを進めたいケースに向いています。
ただし、適切なモデルの選定と、実際の設計内容との整合性の確認が重要です。誤った適用は省エネ基準への適合評価に影響を与えるため、制度のルールに沿って正確に活用することが求められます。
工場建設の際に省エネ適判を受ける流れ
新築や増改築の工場を建設する際、省エネ適合性判定(省エネ適判)の取得は原則として必須です。
まず、設計段階で省エネ基準に適合する計画を立てることが前提です。設計がまとまったら、省エネ適判の申請に必要な書類を準備します。
主に下記のような書類が必要で、消費量の算出には正確な計算が求められます。
設計図面
設備の仕様書
エネルギー消費量の算定資料 など
書類が整ったら、指定の審査機関に申請します。審査では、省エネ基準への適合状況がチェックされ、不備や疑義がある場合は補正や再提出が求められます。適合と判断されると「適合通知書」が交付され、着工が可能になります。
なお、審査には数週間から数ヶ月かかることもあるため、スケジュールに余裕を持った準備が重要です。設計初期の段階から省エネ適判を見据えて取り組むことで、手続きを円滑に進めることができます。
省エネ適判に必要な書類

省エネ適合性判定(省エネ適判)を受けるには、省エネ性能を客観的に示す複数の書類を正確に用意する必要があります。主な書類は下記のとおりです。
設計図・配置図……建物の構造や設備配置を明示する図面類
一次エネルギー消費量算定結果報告書……年間の消費量を算出した資料
設備の仕様書・カタログ……空調、照明、動力などの性能を証明する書類
省エネ措置の内容説明書……導入する省エネ対策の概要を記載した文書
申請書類・委任状など……建築主や設計者の情報を含む公式の申請様式
これらはすべて、省エネ基準への適合性を判断する重要な根拠資料となるため、提出前に内容・形式を入念に確認することが大切です。
まとめ
省エネ適判は、法令遵守だけでなく、工場のエネルギー効率向上やコスト削減にもつながる重要な制度です。手続きを進めるには、対象工場かどうかの確認、省エネ計算、必要書類の準備が不可欠です。
こうした準備を怠ると、後の工事スケジュールや補助金申請に影響することもあります。適判制度を正しく理解し、計画的に対応することが、持続可能な工場運営の第一歩となるでしょう。
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