住宅性能評価とBELSの違いとは?評価制度の特徴と選び方を徹底解説
- soccer31415mt926
- 10月22日
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住宅の性能を客観的に示す制度として「住宅性能評価」と「BELS(ベルス)」が存在しますが、それぞれの違いや使い分け方を理解している方は意外と少ないかもしれません。この記事では、両制度の目的・評価項目・活用場面の違いをわかりやすく整理し、どちらを選ぶべきかを判断するためのポイントを解説します。
住宅性能評価とBELSの制度概要
どちらも第三者機関による客観的な評価制度ですが、評価の対象範囲と目的が大きく異なります。制度の基本的な仕組みについて、解説します。
住宅性能評価とは
住宅性能評価(以下、性能評価)は、平成12年4月1日に施行された「住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)」に基づく制度です。国土交通大臣が登録した第三者機関である「登録住宅性能評価機関」が、統一された評価基準で住宅の性能を検査・評価します。
この制度は「国民が良質な住宅を安心して取得できる市場づくり」を目的としており、住宅の総合的な品質を10分野にわたって評価します。評価対象は住宅のみに限定されており、新築住宅と中古住宅の両方が対象となります。
性能評価には「設計住宅性能評価」と「建設住宅性能評価」の2種類があり、設計段階での図書審査と建設段階での現場検査を通じて、住宅の品質を総合的に保証する仕組みとなっています。
BELS(ベルス)とは
BELS(Building-Housing Energy-efficiency Labeling System)は、建築物省エネルギー性能表示制度の略称で、2016年4月より住宅にも対象範囲が拡充された比較的新しい制度です。一般社団法人 住宅性能評価・表示協会によって運用されています。
BELSは建築物の省エネ性能(燃費の良さ)に特化した評価制度で、住宅だけでなくオフィスビル、商業施設、工場、学校など、用途を問わず全ての建築物が評価対象となります。評価結果は星の数(1つ星〜5つ星)で表示され、専門知識がない方でも一目で省エネ性能を理解できる仕組みです。
2024年4月からは、新築建築物の販売・賃貸時における省エネ性能表示が義務化されており、BELSは第三者評価の代表的な制度として注目を集めています。
評価項目と評価方法の違い

両制度の最も大きな違いは、評価項目の範囲と評価方法にあります。それぞれの特徴を詳しく見ていきましょう。
住宅性能評価の項目と評価基準
性能評価は住宅の総合的な品質を判断するため、10分野にわたる幅広い評価項目が設定されています。必須項目4分野と選択項目6分野に分かれており、住宅の安全性から快適性まで包括的に評価します。
必須項目には「構造の安定に関すること(耐震性等)」「劣化の軽減に関すること」「温熱環境に関すること(省エネ性)」「維持管理・更新への配慮に関すること」があります。特に耐震等級の評価ができる点が大きな特徴で、地震の多い日本では重要な評価項目となっています。
各項目は等級や数値で表示され、例えば耐震性能は等級1〜3で、断熱性能は等級1〜7で示されます。これにより、各性能の詳細な水準を把握できる仕組みになっています。
BELSの評価内容
BELSは建築物の省エネルギー性能に特化しており、評価項目は「外皮性能(断熱性能)」と「一次エネルギー消費量」の2つに絞られています。外皮性能とは、屋根や壁・開口部などの断熱性や遮熱性のことを指し、外の気温に関わらず室内の快適性を保つ能力を評価します。
評価結果は、BEI値(省エネルギー性能指標)に基づいて星の数で表示されます。BEI値は「設計一次エネルギー消費量÷基準一次エネルギー消費量」で算出され、値が小さいほど省エネ性能が高いことを示します。星5つが最高評価となり、ZEH(ゼロ・エネルギー・ハウス)基準を満たす場合はZEHマークも併せて表示されます。
評価の実施主体と手続きの違い
性能評価は設計段階と建設段階の2段階で評価を行います。設計段階では図書審査により設計内容を確認し、建設段階では複数回の現場検査を実施して施工品質を確認します。このため、手続きが複雑で時間もかかりますが、より信頼性の高い評価が得られます。
一方、BELSは多くの場合、設計段階での評価のみを行います。提出された設計図書や計算書類に基づいて評価され、原則として現場検査は行われません。そのため、申請は着工前・着工後・竣工後いずれのタイミングでも可能で、日程への影響が少ないという特徴があります。
活用シーンとメリットの違い

両制度は活用場面や得られるメリットが異なるため、目的に応じた使い分けが欠かせません。
住宅性能評価の活用例
性能評価は住宅の総合的な品質保証を求める場面で威力を発揮します。住宅ローンの金利優遇や地震保険の割引制度では、性能評価書による証明が有効です。特に地震保険では、取得した耐震等級によって保険料の割引を受けることができ、耐震等級3では50%、耐震等級2では30%、耐震等級1では10%の割引が適用されます。
また、設計評価書と建設評価書の両方を取得した住宅では、万が一のトラブル時に指定住宅紛争処理機関(各地の弁護士会)による紛争処理を申請できます。手数料は1件あたり1万円で、裁判によらない迅速で円滑な解決が期待できます。
住宅の売却時においても、総合的な性能が証明されることで買い手に対する安心感を提供でき、資産価値の向上につながります。
BELSの活用例
BELSは省エネ性能のアピールと補助金申請で重要な役割を果たします。ZEH(ゼロ・エネルギー・ハウス)の補助金申請では、BELS評価書の提出が交付要件となっており、補助金を受けるためには必須の書類となっています。
また、2024年4月から新築建築物の販売・賃貸時における省エネ性能表示が義務化されており、第三者評価であるBELSを取得することで、信頼性の高い性能表示が可能になります。星の数による分かりやすい表示は、専門知識のない購入者にとっても理解しやすく、物件選びの重要な指標となります。
省エネ性能の高い住宅は光熱費の削減効果も期待でき、初期投資に対する長期的なリターンを見込むことができるでしょう。
どちらを取得すべきか?選び方のポイント

制度選択の判断基準を整理し、目的に応じた最適な選択肢を検討しましょう。
住宅購入者・事業者の視点で考える
住宅購入者の立場では、求める安心感のレベルによって選択が変わります。住宅の総合的な品質保証を重視し、耐震性や耐久性を含めた包括的な評価を求める場合は性能評価が適しています。特に、地震保険の割引や将来のトラブル時の紛争処理制度を重視する方には性能評価がおすすめです。
一方、省エネ性能に特化したアピールを求め、ZEH補助金の活用を検討している場合はBELSが有効です。BELSは申請費用が比較的安価で、手続きも簡便なため、コストパフォーマンスを重視する場合にも適しています。
事業者の視点では、ターゲットとする顧客層や販売戦略によって選択が決まります。高品質住宅としての総合的なブランディングを図る場合は性能評価、環境配慮型住宅としての差別化を図る場合はBELSが効果的でしょう。
併用することで得られる相乗効果
両制度を併用することで、それぞれの制度の弱点を補完し、より強力なアピール材料とすることができます。性能評価で住宅の総合的な品質を保証し、BELSで省エネ性能を分かりやすく表示することで、幅広い顧客層にアピールできる住宅となります。
特に高性能住宅を手がける事業者にとって、両制度の併用は技術力と品質の高さを総合的に証明する有効な手段となるでしょう。顧客満足度の向上と差別化の両立が期待できます。
ただし、両制度の併用には相応の費用と時間が必要となるため、投資対効果を十分に検討した上で判断しましょう。
取得手続きと費用の目安

両制度の取得を検討する際は、費用と手続きの違いも重要な判断材料となります。予算や日程に応じた制度選択を行いましょう。
住宅性能評価の費用は、設計評価書と建設評価書それぞれ10〜20万円前後が目安となります。両方を取得する場合は15万〜30万円程度が相場です。評価項目数や住宅の規模によって費用は変動し、必須4分野のみの評価であれば比較的安価に取得できます。
一方、BELSの取得費用は5〜15万円程度と比較的安価で、省エネ性能に特化した評価のため必要書類も少なく、手続きが簡便です。申請タイミングの自由度も高く、工程への影響を最小限に抑えられるのも大きなメリットです。
費用対効果を考慮すると、限られた予算で最大限の効果を求める場合はBELS、長期的な資産価値向上を重視する場合は住宅性能評価が適していると言えるでしょう。
まとめ
住宅性能評価とBELSは、それぞれ異なる視点から住宅の品質や性能を評価する制度です。どちらを取得するかは、目的や活用場面に応じて判断する必要があります。両者の違いを理解し、適切に使い分けることで、住宅の信頼性や価値をより高めることができます。
総合的な品質保証を求める場合は住宅性能評価、省エネ性能のアピールや補助金活用を重視する場合はBELSが適しており、より強力なアピール効果を求める場合は両制度の併用も検討する価値があるでしょう。制度の特徴を十分に理解し、最適な選択を行うことが大切です。




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